口腔癌について

こんにちは。

副院長の久保です。

 

某タレントさんの舌癌が大きく報道された影響で、日本中の方が自分の舌や口の粘膜に関心を持っています。最近クリニックに来る患者様でも

 

『口の中に口内炎のようなできものができた』

 

『癌じゃないか心配なので見て欲しい』

 

といった患者様が多数いらっしゃいます。

 

「口腔がん」という悪性腫瘍があることを初めて知った人もいらっしゃるでしょう。

 

今回はこの「口腔がん」について少し触れてみたいと思います。

 

 「口腔がん」はお口の中で発生する悪性腫瘍、いわゆるガンの総称ですが、疫学的には全がんのうち1%程度のいわゆる「希少がん」です。ところが、わが国における「口腔がん」罹患患者は1975年には2,100人であったのが、現在は約8000人に増加しています。

 

多くのがんで発症率が減少傾向にある中、増加していることも「口腔がん」の特徴といえます。男女比は3:2で男性に多く、年齢的には60歳代が最も多いとされています。

 

 「口腔がん」の中でももっとも発生率が高い部位は「舌」で、約60%は「舌癌」とされています。

 

お口は消化器系の入り口であり、タバコやお酒、食べ物などによる化学的な刺激を常に受け、さらに銀歯や入れ歯、また尖った歯による機械的な刺激もあることから

 

発癌にかかわる特殊な環境と危険なリスクが複数存在する場所であると考えられています。

 

 また組織学的にいうと「口腔がん」の90%以上は「扁平上皮癌」であり、むずかしい言葉ですが、つまり直接見て触れることができることから、比較的検診は容易とされています。

 

 しかしながら、歯科医師であっても、専門的に多くの所見を診た経験がないと、診断は難しいとされています。

 

また、口腔粘膜には「白板症」や「紅板症」といった前癌病変(癌のひとつ前の状態)と呼ばれる疾病状態もあるため、口腔粘膜に異常を感じる方は、歯科医師による検診が極めて重要です。日本人における前癌病変の保有率は2.5%と報告されています。

 

 

 「口腔がん」は痛みを伴わないことも多いため、病態が増悪してから受診される傾向があります。「口腔がん」は切除できても、大きく切除すると機能障害が残存し、お食事や飲み込む機能に大きなダメージを残すことになります。

 

 当院では私が口腔外科出身であり、口腔癌の患者様も多数拝見して参りましたので、検診時「口腔がん」を発見した場合は専門機関へ直ちにご紹介しております。

 

口腔がんは全体的に見れは「希少がん」ですが、意外と身の回りに存在し、見えているのに見過ごされがちな悪性腫瘍ですので、十分に気を付けていただきたいと感じています。

 

 なにかご心配なことがありましたらいつでもご相談ください。